2006年11月14日

[  些事極論  ]

自殺と報道の話

自殺予告:止まらぬ連鎖…有効策なし焦り濃く@毎日新聞

 伊吹文明文部科学相あての「いじめ自殺予告文書」を受けて全国的な警戒が続く中、子どもの自殺が止まらない。文書を公表したものの、相次ぐ予告に戸惑う文科省。教育委員会、各学校も即効性のある対策は打ち出せないままだ。連鎖は食い止められるのか。子どもたちに「命」の大切さをどう伝えるか。過去にも度々社会問題化したいじめ問題の教訓はいつ生かされるのか。【佐藤敬一、吉永磨美】

大体においてこの状況は、文部科学省のレベルで即効性のある単一の方策など打ち出せようはずがない。
たぶん、本来はまったく違う筋の問題を「自殺」というタグをつけて一列に並べてしまっているからややこしくなるのではないだろうか。
いじめの問題は、一義的には暴力や嫌がらせの犯罪の問題であり、その裏には都市化による地域社会の変容の問題とかなんとかがある。教員の自殺は、学校が本来果たすべき機能と期待される役割と課せられている制限と実際の能力、それぞれの間にあるギャップやミスマッチが問題なんだろう。本来はそれぞれ個別に検討すべき問題だ。

ブロガーのための自殺関連記事ガイドライン妖精現実

下記資料はWHOが2000年に公開した『自殺の回避: メディア・プロフェッショナルのためのリソース』の抄訳です。本書は実質2〜3ページの小冊子です。第一に、「メディアでの不適切な取り上げ方が、自殺行動を増加させる」という研究結果を示し、第二に、ではどのようなニュースの扱い方をすればいいのかを説明しています。ここでは序文、研究史などは省き、実際的な指針の部分をほぼ全訳しました。

自殺率の国際比較は非常に難しい。データを記録する方法が国によって大きく異なるからである。《中略》したがって、以下の注意が必要である。
  • 統計値は慎重に正確に解釈する。
  • 真正で信頼できるソースを使う。
  • たとえ時間がなくても、即興的になされたコメントは慎重に扱う。
  • 少数のデータによる一般化は特に注意。「相次ぐ自殺」「世界でも自殺率の最も高い場所」といった表現は避けなければならない。
  • 自殺行動を社会・文化の変化・悪化と関係づけようとするのは慎むべき。

まとめ
すべきこと
  • 事実の公表にあたって専門家の助言を得る
  • 「既遂」「未遂」と表現し「成功」「失敗」と表現しない
  • 関係あるデータだけを表紙以外に掲載
  • ヘルプラインや公共リソースの情報提供
  • リスクの指標・兆候の周知
すべきでないこと
  • 写真や遺書は公開してはいけない
  • 使用された手段の詳細を伝えてはいけない
  • 原因を単純化してはいけない
  • 美化したり扇情的に扱ってはいけない
  • 宗教的・文化的類型化をしてはいけない
  • いかなる非難もしない

なんというか、ショックなのは、すべきでないこととして挙げられている項目すべてがテレビ新聞雑誌などで必ず目にするというのがすごいな。


こういう文章を読んで、文科省が自殺予告文章を公表したのは間違いじゃないのかと思う反面、そうはいっても隠匿するわけにも行かないだろうし発表されたら内容を知りたくなるのは人情だろうしなとも思ったりする。

2006年11月08日

[  些事極論  ]

自殺予告の話

自殺予告手紙:「生きていくのがつらい」……手紙全文@毎日新聞
なかなか強烈な内容。
いたずらの類と思いたいが、それにしては文章から立ち上る妖気が尋常ではない。

それを受けてこんなエントリを見つけた。
人権を失ったまま生き続けても、そんな命に意味はない。アンカテ

人権は命より大事なものだ。絶対に守るべきもので、もし奪われたらどのような手段を取ってもそれを訴えるべきだ。訴えが聞かれなかったら、聞かれるまで訴え続けて、それをやり尽くしてそれでもダメだと思うなら、人権侵害を止める唯一の手段が自殺だと思うなら、死んだほうがいい。

自殺以外に逃げ道を見つけることができなかった者に対して、自殺に至る経緯を無視して命の大切さを説くことに意味はないということか。

そうはいっても自殺という手段そのものがだめなことは確か。このエントリに対して以下のようなTBがついていた。
命について結城浩のはてな日記

essaさんのエントリは途中まで正しいことを書いているが、結論は誤っている。大間違い!
<中略>
これはレトリックでも何でもなく、とにかく、理屈抜きで、自殺しちゃだめ!

自殺にいたるまでの問題はただ自殺によって忘れ去られるのみで、解決も終了もしない。場合によっては問題があったことすら周知されないかもしれない。


そもそも自殺によって守ろうとしたものは何か?
絵空事404 Blog Not Found

まず、一つ確認しておこう。

人権というのは、絵空事であることを。

人権を莫迦にしているからではない。

人権を大切にしたいから、人権が絵空事であることから目を背けるべきではないのだ。


絵空事、というか「人権」がある種の共同幻想めいた側面を持つことは確か。
「人権」なるものは所与のものとして万人に与えられてはいるが、保障されているわけではない。公安9課の人も言っていた。

そもそも、人権を侵害している主体は誰か。
■[雑記] 自殺予告への対応について。 児童小銃

被害者に死ぬなとかヌルい事言う前に、

  • いじめの加害者にいじめをやめるよう言うこと。
  • 加害者は犯罪者であるとはっきり言うこと。
  • せっかく改正した少年法です。事件として立件すること。
  • いっそのこと「いじめ」という言葉をやめてはどうか。
  • 「児童虐待」でしょ? これって。

おそらくここに、数の非対称を元にした怠惰または誤解がある。
たいていの状況において、いじめる側のほうが多数であり、いじめられる側は単数または少数だ。
多数であるから対処が大変そうに見える。多数であるから罪を背負わせると一人当たりの荷重は極端に少なくなる。多数であるから渡っている場所が赤信号でも気にしない。もしかすると多数であると赤信号でもわたるべきだとその場のローカルルールが出来上がるような気がするかもしれない。
第三者の立場から見ると、自覚の薄い多数を相手にすると暖簾に腕押しのような気がする。それよりは少数のほうに対して何か言ったほうが、少ないコストでパフォーマンスがあがるような気がする。

たぶん手当てをするべきは、多数の方なのだ、ほんとは。


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