■日本人拘束16 まとめ、ていいのかな。
イラク日本人人質事件 (from Wikipedia)についてのあれこれ。
- イラクの kidnap fever は終わったのか
日本人5人が全員無事に帰ってきたので、たぶん、マスコミの露出はぐぐっと減ると思われるイラクでの外国人誘拐。果たしてこれで、めでたく打ち止めとなるのだろうか。
今までなんだか手当たり次第という感じがあったが、次からはすこし相手を考えて拉致るのじゃないかと思う。
とかなんとか書いてUPしよと思った矢先にこんな報道があった。
拘束の「米兵」画像を放映、イラクで初めての人質か CNN
イラクで米兵が初の人質に 犯人は捕虜交換要求 産経
米兵解放で交渉せず 米大統領補佐官 産経
軍事活動に直接関係のない民間人を捕まえては開放するという一連の行動は、単にあてずっぽの行動ではなくて、もしかすると計算ずくのデモンストレーションかなとも考える。どっかのニュース番組でも似たようなことをいってた。今後は軍人か軍関係者にターゲティングされるかもしれない。この、たった一人の捕虜に関しても、殺されずに長引けば、アメリカの世論を二分するインパクトはあると思う。ああ、そうだな、捕虜が生きているという点は重要だな。ここで現地武装勢力が捕虜を殺しちゃったり虐待したりしたら、単純にアメリカの世論はより苛烈になるだけだけだ。しかし生きている間は、取り戻すまでは穏やかにいこうという意見も鷹派とある程度拮抗するだろう。多分長引いている間は、現地武装勢力と米軍特殊部隊との水面下でのおっかけっこが続くだろうが、その間にアメリカの世論がいかに変化するかが、レジスタンスの生命線となる。捕虜を殺さずにそこそこの待遇の質を確保しながら、いかに長期間逃げ切るか。勝負の分かれ目。
- 自衛隊はいつ撤退するのか
いや、誘拐事件が起こったから引き上げろというつもりはない。それとこれとは別の話だということは理解しているつもり。ただ、気になる点がある。ひとつは、政府与党はいまだにイラクがどのような状態になれば自衛隊派遣が成功したといえるのか、明確なビジョンを示していないように思う。
もうひとつは残り時間。確か自衛隊の派遣可能期間は今年の12月15日だっけ。もう4月も半ば、全体の3分の1が過ぎ去っている。自衛隊の給水活動ってもう始まったんだっけ?(訂正:4/21:給水活動は現在継続中。停止しているのは道路の補修工事など)
閣僚が自衛隊派遣支持 時期で慎重判断の要望も 京都新聞
(12/9)小泉首相会見・一問一答3「治安悪くても活動できる」 日経
現状で自衛隊はサマーワの陣地に引きこもったまんまだ。イラク特措法では、たしか戦闘地帯では活動できないはずだったよな。このまんまファルージャの騒動が治まらなくてサマーワにまで飛び火したら、自衛隊は何にもしないうちに「状況の悪化」か、でなければ「時限立法のタイムアップ」でどっちみち撤退ってことになる。自衛隊は結局何をしにいったのかという議論が持ち上がるかも。
まぁ、復興を考えるんだったら自衛隊の次にはビジネスマンが乗り込めるような算段をするべきだけど、状況は遠いよな。
- イスラム聖職者協会と日本外務省との関係はほんとはどうだったのか
日本人に限らず、各国籍の人質解放に影響力を発揮したイスラム聖職者協会。ただでさえ複雑なイラクゲームに新しいプレイヤーが登場である。政府はなかなか人質解放までの経緯や実際にどのような働きかけをしてきたかを明かしたがらないが、このイスラム聖職者協会なる組織が実際の交渉役を担ったことは間違いあるまい。
じゃあ日本政府は本当は何をしていたのか。安全確保のためにしゃべれませんとかいっているが、事態が収まればその辺のことは公表してくれるのだろうか。
「日本が経済支援に言及」 クバイシ師が不快感 共同
こんなニュースを読むと、ほんとにイスラム聖職者協会とまともな交渉が成り立っていたのか不安になる。
- ファルージャの問題はどこに向かうのか
そもそもややこしいのは、今回の kidnap fever の発端はファルージャにある。イタリア人殺害も自衛隊撤退要求も、すべてはファルージャ攻防戦の停戦交渉で有利な条件を引き出さんがための行動だといわれる。
最初のほうで米軍捕虜の生存が今後の状況を左右するみたいなことを書いたが、殺すといえば、ファルージャ事件の最初の死者はアメリカの民間人だ。ところがこんな記事を読んじゃうと、どいつもこいつもうそつきだ、大うそつきばっかりだなどと尾崎豊みたいなことをつぶやいたりしてしまう。
米イラク統治の崩壊from 田中宇
ファルージャの事件は実はアメリカ側が誘ったものだというのだ!
まぁ、この人の記事は相変わらず結論に直接的証拠があるわけじゃないが、常に事実と推測を明確に意識して分析しているので信憑性は高いように思える。てか、こんな結論の信憑性が高くてもあんまりうれしくないけど。
米への怨念、冷遇への不満 浮かび上がる拉致の背景 共同
イラクで米兵死亡、開戦以来の米兵死者数は500人に=米軍 ロイター
- 自己責任問題といろんな意味の穴について
んで、こういった日本の行く末を占う話とは別に、政府与党のえらいさんにケツの穴の小さい発言が目立つ。皆さん便秘なんでしょうか。それとも与党にホモセクシャルはいないということか ぐは、差別発言
自覚持ってほしい」=解放の3人に苦言−小泉首相 Yahooニュース
「昼夜24時間態勢でいかに多くの人が取り組んだか。退避勧告を無視して出掛けた方に良く考えていただきたい」と苦言を呈した。
寝ずにがんばったのは大変だろうけど、それを口にしなきゃかっこよかったのに。
救出費用の負担求める声も=自己責任を強調−閣僚発言 Yahooニュース
他の事件でも同じように請求された帰りの飛行機代などは実際に請求される模様。記事中には責任との兼ね合いとあるが、その兼ね合いを決めるのは誰だろうか。
「自己責任」批判相次ぐ 政府・与党、救出費請求案も浮上 gooニュース
わらわかすのはここ。
ただ、渡航禁止には自民党内にも「法律まで作って、また入国されたら政府の対応にぬかりがあったと非難の対象になる」などの慎重論も少なくない。
本音と建前の使い方を間違っている。ここは建前の「国民には渡航の自由の権利があり云々」といっとくべきで、非難されたくないという本音をそのまんまもらしてどうするか。
全体に、今の与党の発言は政治家の本分(とか書くとえらそう?)を繕うことをあんまりしないように見える。
たしかに、被害者の側もガードの甘いところはあったと思う。事件直後の被害者家族の対応がまずいと思ったことはすでに書いたが、ほかにもたとえば、開放された3人の人質のうち、日本側の事情聴取に警察が同席したことに不満を漏らす人もいたらしい。これなんか「ある政治傾向をもつ人々は警察に迫害されがち」という先入観が現在ではかなり希薄であるということを、意識上でアップデートできていなかったが故のパフォーマンスとも受け取れる(*1)。警察はもちろん迫害しにいったんじゃなくて、単に被害者から事件の状況を確認したいだけだったんだろうけど。それに高遠さん、イラクに残るかと聞かれたあの時点で、マスコミの前で泣いちゃだめだよ。逆効果。いまならむしろ、ぐっと胸を張って穏やかに宣言したほうが効果がある。哀れみやヒステリックさは売りにならないと思う。
でも、そういうズレた反応をした被害者と家族側に相対する政府のほうも、同じレベルの反応を正面から投げ返しちゃった感じもする。日本人がテロの対象になる可能性は、自衛隊を派遣する前からあっちこっちで指摘されていることであって、それをまた、いまさらのように自己責任の大合唱が巻き起こる。事前の勧告などの国としてやることをやっているという自信があるなら、よけいなことは言わぬが吉だ。えらい人がそろって「ほうれみろ、ほうれみろ」と囃し立てているようでカッコ悪い。拘束された5人が自己責任を自覚しようがすまいが、国としての方針が変わるわけじゃなかろう。というよりもたぶん、自己責任云々よりは人質事件と自衛隊関連の政策を直結させようとしたことに、腹が立ったのじゃないか?
小泉さんはパフォーマンスがうまいという評判だけど、どうもこう、サヨ系の匂いが漂ったとたんに態度を硬化させる傾向がありますな。以前紹介した高校生の嘆願書の件もしかり、今回の事件でも被害者家族に面会しないとか、自己責任をやたらと言い立てたりとか。それぞれ、ちょっと考えてから適当に当り障りないことをいっときゃいいものを変に正直というか、いいたいこと(だけ)をずばりといっちゃうからある意味、男らしいのか。信じてもいない建前をまくし立てるよりは多少ましだけど、公僕の本分(とかいうとえらそう?)よりも先にまず最初に本音だけをいっちゃうのは、底が浅いというか大人気ないというか。今の時点で、自己責任論を云々する理由に、事件の再発を防ぐという名目が言及されているが、これもなんだかよくわからん話だ。そもそも完全に再発を防ぐ手立てなぞない。たとえイラクから民間の日本人がすべていなくなっても、米軍の捕虜が出てきている以上、極端な話、自衛隊員だって誘拐されてもおかしくない。また、可能性の話なら、イラク国内に限定できるわけでもない。連中が日本まで出張してきても不思議じゃないのだ。渡航を禁止することは本質的な解決にはなりえない。
もともとテロとの戦いの主役は軍隊ではない。本来は、外交と税関と警察なのだ。
*1
2004/04/30追記
本日、解放された3人のうち、今井さん、郡山さんのインタビューがあった。
それによると、多少は警察の取り調べもある種の予断を持ってあたったようである。被害者たちにはすくなくともあまりいい印象を与えることはなかったようだ。誤ったパフォーマンスと書いたのは勇み足だったかも。一応訂正しておく。
投稿者 snjx : 2004年04月19日 19:49