本書を読んで、なるほどと思うところ、多々あり。
いわく、日本の政治には利害関係の調節機能しかない。いわく、日本の官僚には半ば自己目的化した縦型組織の常識をどこにでも押し付ける。たとえば気象衛星不在の問題。これなんかは政治と官僚の問題が両方絡み合った結果である。同じような構図は宇宙開発だけに限らず、きっと日本中に偏在しているのだ。たとえば厚生省の薬害とかさ。ほらほら、普段のニュースを見てると、思い当たるところが多いでしょ?
感想を書くとなんだかめんどくさそうな本に思えるけど、すごくわかりやすく書いてある。読みこなすのに特別な知識なんかは必要ない。宇宙開発の予算規模の話なんかも、マスコミで話題になった公共事業などと比べてわかりやすく解説してあるし、人工衛星とはどんなものかなんて基本的な知識もやさしく解説してある。むしろこの本を読んで、ニュースの裏側にある、一見してわかりにくい事象の、いわばスケール感みたいなものを手に入れることができるかもしれない。
蛇足を書いておくけど、さっき書いた、行きたい人と興味のない人の間を流れている深くて暗い河ね。これって、いろいろいわれているけど結局はすべて、リスクとコストの問題になるんだよね。だって、いまどき日本からハワイに旅行するのにいちいちその人類史における意義なんて論じる人いないでしょう?ビジネスでも観光でも、旅行自体には手続きと料金が必要なだけ。でも、100年も遡ればそれはもう人命をも賭けた一大プロジェクトだったんだから。月だって火星だって往復の仕方を確立しちゃえば、そこはすでに未踏のフロンティアではない。海外旅行とかわらないのだ。
さらに余談を書いておくけど、じゃぁその深くて暗い川がどの辺を流れているのかというと、未踏のフロンティアを単なる旅行先に替えるまでの技術の確立を、いったい何がドライブするのかってあたりにとうとうと流れている。たとえばアポロが月に行ったころは、冷戦(恐怖のコストがうなぎのぼり)をベースにした米ソの軍拡競争が、興味のない人たちも巻き込んで計画をドライブする一助になったわけだけど、今は何があるんだろうか。
そういう意味で言えば、良くも悪くも平和目的に限定された日本の宇宙開発は、むしろここまで発展してきたのはすごいことなのかもしれない。